OpenAIが2023年8月28日(現地時間)に企業向けAIチャットサービス「ChatGPT Enterprise」の一般提供を開始したと発表しました。
以前Bing Chat Enterpriseが発表されたと記事にしましたが、OpenAIも企業向けのサービスを提供し始めたようです。
これによって企業がChatGPTを利用する上で懸念とされていたデータの保護や学習されてしまうという点が解消されることになりそうです。
この記事を読めば何が良くなったのか、何がすごいのかがわかる様にまとめていきます。
ChatGPT Enterpriseのポイント
モデルのトレーニングに使用されない
通常のChatGPTではチャットデータが学習に使われてしまうということで、業務での利用を制限している企業が多く見られましたが、Enterpriseではトレーニングに使用しないと明言しています。
SOC2に準拠しデータの保護を行う
データは暗号化され、さらにSOC2に準拠しているとのことなので、情報漏洩についての心配もありません。
SOC 2(Service Organization Control 2)は、米国の会計基準機関であるAICPA(American Institute of Certified Public Accountants)によって設立された、情報セキュリティに関するコンプライアンスと監査のフレームワークです。このフレームワークは、特にクラウドサービス、データセンター、ITといったサービス組織が顧客データをどのように管理しているかを評価します。
SOC 2報告書は、以下の「信頼の原則」に基づいています。
- セキュリティ – システムが不正アクセスや情報漏洩、資源の破壊から適切に保護されているか。
- 利用可能性 – システムが一貫して利用可能で、パフォーマンスが保証されているか。
- 完全性 – システムが承認された方法で変更され、不正な改ざんが防がれているか。
- 機密性 – 情報が機密保持され、不正なアクセスや開示から保護されているか。
- プライバシー – 個人情報が収集、使用、保管、開示、処分される際のポリシーと手続きが明確で、これに適合しているか。
SOC 2の認証を受けるということは、組織がこれらの原則に従っていることが独立した第三者によって評価された、ということになります。これは、顧客やビジネスパートナーに対して信頼性と透明性を示す重要なステップとなります。
ChatGPT
管理者向け管理コンソール
管理コンソールでは以下の機能が搭載されるているそうです。
- メンバーの一括管理
- SSO(シングルサインオン)
- 使用状況に関する分析ダッシュボード
最大32,000トークンが入力可能
これまでChatGPTでは4096トークンが最大だったのに対し、Enterpriseでは32,000トークンまで入力可能となっており、長い文章の要約などが可能になってくる。
業務利用を考えると、文字起こしした会議データの要約などが可能になる。
GPT-4が利用可能
GPT-4が標準で使える他にも、使用制限がなく最大2倍の速度で実行が可能とのこと。
これまでのGPT-4は3時間で50メッセージまでと制限があり、制限に達すると一定時間利用できなくなる仕様になっていました。
Enterpriseではこの制限がなくなり、いくらでも使い放題になったとのことです。
料金は未発表
2023年8月29日現在、ChatGPT Enterpriseの料金は発表されていません。料金については営業担当者に問い合わせる必要があるとのことです。
まとめ
本家OpenAIがChatGPTの企業利用版を発表したことで、唯一あった弱点がなくなってしまったという印象です。
まだChatGPTに企業データを組み込んでチャットを行うという機能はありませんが、おそらく出てくると思います。あとは企業ごとにモデルを学習させて自社専用モデルを作っていくなど。
OpenAIのAPIを活用し、個別に企業用ChatGPTを開発して提供しているシステム系の会社はピンチになる。学習されない閉じられた環境という優位性が全くなくなるから。
これからどんな機能が増えていくのか目が離せない。
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